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日々巡り会ったものの感想・レビュー

カテゴリー: 本 (page 3 of 22)

かとりまさる – しおんの王

2004/5~2008/6まで月刊アフタヌーンで連載された将棋サスペンス漫画。
ちなみに2008年3月までアニメもやってて、そっちが先に終わった。

もちろん内容はほぼ同じだが、やはりラストが少し異なる。
コミック版のほうが好き。

原作のかとりまさるは、元女流棋士林葉直子のペンネーム。
11歳で女流アマ名人戦で優勝し、女性ながら奨励会に所属するなどしてるあたり、
小(中)学生の女の子が主人公という作品が妙にリアルに思えてくる。

コミックでは、作中の対局の局面図や解説なんかも載っていて面白い。
特に最終巻では、あの、紫音vs羽仁名人の初手から投了までの棋譜が掲載されている。
(途中の87銀は87竜の間違い?)

アニメ版でもそうだったけど、対局中の迫力がすごいのがこの作品の魅力。
間違いなく将棋が指したくなる一冊。

(個人的に一番印象に残った好きなシーンは決勝対局後のアレだけど(笑))

夏目漱石 – 行人

行人を読んだ。

一郎の苦悩を弟や、一郎の友人の視点から描いた作品。

一郎は苦悩を脱したい、あるいは脱することができるはずなのに、脱しない、そんな人だ。
そして、この苦悩からは逃れられない運命にある気がする。

なぜという具体的な理由は無いのだが、
自分と一郎のシンクロ率がかなり高い気がするので、なんとなくそう思うのだ(笑)

以前、漱石作品が好きな理由に、登場人物中に自分と似た人が出てくるから、
というのを挙げたが、今回は一郎である。

苦悩の原因を探り、解明しようとしてまた苦しむ。
しかも解明したところで、どうもならないのはよく分かっている。

途中出てくる比喩がうまい。
「山がある。その山を呼び寄せるが、山は来ない。だから自分のほうから山へ行く。」
一郎は山を呼び続け、疲れ果てるのである。
そして恐らく自分のほうから山へ行かなくてはならないことを知りつつ、
それでも呼び続けることをやめられない。

周囲から見れば、結局ただの厄介者である。
その厄介な様子が、他人の視点を通じて、表面から内面までよく表現できている。
個人的には結構好きな作品。

ただ、よく分からない人にはよく分からない本なんだろうな、という気もする。

兄さんがこの眠から永久覚めなかったらさぞ幸福だろうという気がどこかでします。同時にもしこの眠から永久覚めなかったらさぞ悲しいだろうという気もどこかでします

オススメ度★★★

関連記事:
夏目漱石 – 彼岸過迄

関連リンク:
青空文庫 夏目漱石 行人

夏目漱石 – 二百十日・野分

二百十日と、野分を読んだ。

二百十日のほうは会話主体でさくっと読める。
友人同士の二人があれこれ話しながら山に登る話。
主張しつつ笑いどころもある佳作だと思う。

作品としてもっと良かったのは野分のほう。
3点ほど印象に残った箇所を。

1.漱石らしい自己本位の主張

一能の士は一能に拘泥(こうでい)し、一芸の人は一芸に拘泥して己れを苦しめている。
(中略)
「自己が拘泥するのは他人が自己に注意を集注すると思うからで、つまりは他人が拘泥するからである。……」

わが道を行くべく、拘泥しないために、
一、他人が自分の何かに拘泥しても、自分は拘泥しないこと
これは難しい。

二、拘泥しなくてすむように大樹に寄る。時流に従う。
これはやりやすい。

いずれにしろ、むやみに他人の視線に拘り、
つまらないことで時間をとられて、
成すべきことを成せない、ということが無いようにせよという主張。

2.観察眼が光るシーン

ここだけ抜き出すと分かりづらいかもしれないが、
親友(高柳君)を結婚披露宴に招いたシーン。
高柳君は予想外にみすぼらしい姿でやってくる。

世の中は「これは」と思った時、引き返せぬものである。高柳君は蹌踉(そうろう)として進んでくる。夫婦の胸にはっときざした「これは」は、すぐと愛の光りに姿をかくす。
「やあ、よく来てくれた。あまり遅いから、どうしたかと思って心配していたところだった」偽りもない事実である。ただ「これは」と思った事だけを略したまでである。
「早く来ようと思ったが、つい用があって……」これも事実である。けれどもやはり「これは」が略されている。人間の交際にはいつでも「これは」が略される。略された「これは」が重なると、喧嘩なしの絶交となる。親しき夫婦、親しき朋友が、腹のなかの「これは、これは」でなし崩しに愛想をつかし合っている。

漱石作品はこういう描写が多くて面白い。

3.最終シーン

これも流れの中でのことなので、抜き出して紹介するのは難しいが、
クライマックスの盛り上げ方はいつもすごいと思う。
彼岸過迄なんかもだったけど、
停滞気味な流れから急展開させることによる迫力は相当なもん。
それをラストにもってくるんだからつい感動してしまう。

この辺は魅せ方のうまさだなー。
重要な主張はもっと地味にやってるけど、物語としてエキサイトさせることも忘れてない感じ。

オススメ度★★★

関連記事:
夏目漱石 – 彼岸過迄

関連リンク:
青空文庫 夏目漱石 野分

笠井潔 – バイバイ、エンジェル

バイバイ、エンジェルを読んだ。

矢吹駆シリーズ第一弾。
パリを舞台にしたミステリー。

物事に、唯ひとつの論理的な説明というものは無く、
作ろうと思えば、いくつでも論理的な説明ができてしまう。

そこで、数多くの正しい推論から、
唯一の真実へと至るために、現象学的な観点から物事を俯瞰する。

そんな、哲学ミステリー。
やっぱり、カケルの哲学談義がいいね。

哲学者の密室を読んでいたので、特に新鮮な感動はなかったけど、十分楽しめた。

「できるだけ簡単な生活をする」

それを目指したいんだけど(><

オススメ度★★★

関連記事:
笠井潔 – 哲学者の密室

巌谷国士 – シュルレアリスムとは何か

シュルレアリスムとは何かを読んだ。

よく言われる、「シュール」はシュルレアリスムが語源だけれども、
一般的に解釈されている意味とは全然違うんですよね、
という話から始まる、講演調の内容。

端的に言ってしまえば、シュルレアリスムとは、
「現実離れした不思議な世界」ではなく「現実と連続して存在する、強度の現実世界」
ということらしい。

強度のというのは、本質をついている、という意味だと解釈してみたり。

現実と連続(リンク)しているんだけれども、その途中の段階が省略されていたり、
作品として出てくることなく、最終段階が、ぽっと出てくるので、
いわゆる「シュール」なことになってしまう(笑)

禅問答に近いものがあるかもしれない。
問いがあって、答えがあるんだけれども、その途中が無いから、
答えがすごく奇妙に思えてしまう。

本書ではシュルレアリスムのほか、それに関連して
メルヘン、ユートピア、と主に3つの主題について語られている。

講演だけに、普通の聴衆になった気分で、気軽で分かりやすい。
さくさくと読める割に興味深い内容が良い。

メルヘンでの、おとぎばなしについての考察や、
現代日本が古代ギリシアあたりの人達が想像していたユートピアにかなり近い
(ただし、それはかなり良くない(笑))といった考察が面白い。

オススメ度★★★★

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