数の現象学を読んだ。

数学(算数含む)を習ったとき、いつの間にか当たり前になっていたこと、
あるいは「こういうものだ」と教えられたことを、検証した本。

マイナス×マイナスはなぜプラスなのか、のような実務的な内容ではない。

数学に現れる現象について、
その歴史・文化・人間を通して概念化を試みている。

そういう意味で、より深い理解に役立つ本である。

あの頃の数学がなんだったのかを知りたい方へオススメ。

数学と言っても、扱っているテーマは加減乗除、小数、分数、比くらいで、
内容的には主に小中学校でやったものだ。
この中にどれだけ深い意味が見出せることか。

数学なんて高校までは暗記科目、
なんてのが堂々とまかり通るほどつまらないことはない。

本書(選書版)には数学史のことと、
数学教育のことも書かれていて、こちらも興味深い。

結局のところ、数学が人生の役に立たなくても、
面白ければ熱中してやるもので、
熱中させられないのは、
教師が「数学は魅力が無い」と語るようなものだ、
といったことが書かれている。

確かにその通り。
そして、それが数学を暗記科目にさせているのだ。

元来、人間というものは、束縛からは知的獲得ができにくくなっている。
思考の自由によってこそ知的な獲得は可能で、その<自由>が逸脱にならないようにするのがカリキュラムの<構造>なのである。

今のゆとり教育って、明らかに<自由>が逸脱になっちゃってる気がする。
本書でも、ゆとりについてちょっと触れてるけど、
その憂いが当たってしまった感じ。

それにしても、森先生の考え方はなんとなく落ち着く。
ややこしくて、つかみどころの無いものを無理に割り切ろうとせず、
そのまま認めようとしてる感じがいい。

数学の世界にあっては、とても珍しい気もするけど。

オススメ度★★★

安田光雄氏のイラストがいい感じ。