食道楽 夏の巻
食道楽 夏の巻を読んだ。

随所に中川の持論が展開される。

お登和さんの元へ料理修行に来ている
子爵の娘、玉江さんが縁となり、子爵の家に招かれた。

自慢の邸宅を見学するという時に、
中川は、まず家の中心点を見せてくれと言い、
子爵が中心点とはどこかと聞くと、
一家の者が毎日口にする料理を作る場所、台所だと言う。

多くの貴族の例にもれず、
お客用の部屋、庭、自身の風流生活にはお金をかけるが、
台所はと言うと、最も低予算、という造りのお屋敷。

滅多に使わない客間や庭は立派なのに、
人の基礎たる食べ物を扱う場所が粗末なのはこれいかに、
という中川の指摘に自分の愚を知り、ただちに食を見直す決意の子爵。

そして、遂には、中川のような人が家庭を幸福にできる男ぞ、と思い、
「中川さんに、女はどういう夫を持てば幸せか聞いてみなさい」
と玉江嬢に言う。

もちろん、玉江さんもそれがどういう意味かを悟る。

「だつても爾んな事は」
と顔紅らめて横を向くに涼風一陣、庭より桂香を送り来る。

いいじゃないですか。

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