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神林長平 - 小指の先の天使

2007/09/26

電子顕微鏡でもそれらを捉えることはできるが、ではそれは、なにを意味しているのか、というメタレベルでの問題をきみは解決しなくてはなるまい
なんと清浄な街

小指の先の天使を読んだ。

新旧の短編が収められている。

やっぱりすごいと思うのは、どの作品もしっかり神林ワールドになってるとこ。
書かれた年代で表現が違う印象はあるものの、
世界観そのものはブレが無い。

が、個人的にはピリッとこなかったんだよなー。

さっきの「世界観」も悪く言うと、
あー、またそれ系の話ね、という感じで。

それでも「抱いて熱く」みたいのは好きだけど(笑

あと、ハードウェアは有限だけど、
計算によって無限を表現している、みたいな考えは面白かった。
まあRPGなんかのゲームに近いものがあるけど。

図書館に並んでる本は実は中身が真っ白で、
誰かが手に取った瞬間に中身が表示される、といった感じ。

実際そういうこと考えたこともあったな。
世界というのは、たった今、自分が見て、聞いてる範囲しか存在してなくて、
家から学校へ向かうと、家は消滅して、学校がその都度、
昨日とつじつまが合うように存在し始めてるんだ、みたいな。

そして、それを反証することはできない、と。
五分前仮説みたいな感じだね。

うーん、同じ短編集なら、麦撃機の飛ぶ空のほうがオススメ。

オススメ度★★

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神林長平 - 死して咲く花、実のある夢

2007/09/11

死して咲く花、実のある夢を読んだ。

この世には二種類の人間がいる。
死んでいることに気づいている者と、そうでない人間の二種類。

量子力学的解釈と、仏教思想を融合し、
人間の生と死、意識の問題について思索したSF長編。

量子力学ネタがあると気づく後半までは、ちょっと退屈な展開だった。
今見てる夢が夢で無い証拠は…、みたいな、
夢オチがちらついて疑心暗鬼になりつつも、
ネタに気づいてからはラストまで一気に読めた。

ただ中盤ぼーっと読んでたので、
作者の考えがしっかりつかめてないような気もする…

とりあえず、量子力学にまつわるエピソードの一つ、
「シュレーディンガーの猫」は知ってから読んだほうが面白い。

一応ここでも、シュレーディンガーの猫の話を超簡単に書いてみる。
ただし、かなり歪曲されているので、気になる人はググるか、
量子力学の雑学本でも読んでみるといいと思う。

シュレーディンガーの猫というのは、実験のことである。
ただし、頭の中だけで行う実験で、実際に行われたわけではない。

・予備知識
1.素粒子レベルの極微の世界では、量子というものが存在する。
2.量子は観測して初めて、1つの粒子として存在することが確認される。
3.観測するまでは粒子ではなく、単に「粒子が存在する確率」である。
これは粒子が飛び回っているとか、霧のようになっているという意味ではなく、
粒子の存在そのものがもやっと広がっているイメージ。
これは日常のものでは例えられない概念なので、そういうものだと思うこと。

・実験道具
1.毒ガス噴射機能付きの中が見えない箱
2.猫

重要なのは、この箱。
実は、1つの粒子の状態次第で毒ガスが噴射されるのである。

ところが粒子は、観測されるまでは量子であり、存在の確率でしかない。
つまり、箱を開けて観測し、結果を確定するまでは、
毒ガスが噴射された状態と、されてない状態が同時に成り立っていることになる。

さて、そんな箱の中に猫を入れて一時間。
今、猫は生きているのか死んでいるのか…
いや、正確に言えば、生きてもいるし、死んでもいるのである。

本作では、そんな「箱の中」を描写したような内容になっている。
もちろん、クライマックスは箱を開けて観測するシーンである。

以下、ネタバレ。

「結果」は観察者によるのでなく、
自らの意識・意思によって収縮させることができるとし、
「箱の中」にいた三人は、
一人は死を悟って彼岸へ行き、
一人は生を確信して現世に戻り、
一人は迷いを以って生まれ変わって現世に戻る。

という結果が観測されるに至る。

秋月が箱、
三人が猫、
マタタビ装置が毒薬の機械、
オットーが引き金となる粒子(量子)、と考えると結構つじつまが合うかもしれない。

しかしまあ今回は、神林氏のお話に付き合ってみた、という感じだなぁ。
あまり具体的な物理学をネタにしたのはあまり好きじゃない。
嘘っぽくなるというか、本当に無邪気な想像になるから。

ただ、僕にとって本書は、
「自分の思想を自分の型で表現する」のがどういうことか、
というのが分かる一冊だった。

人間というのはそのように世界を解釈したり想像する能力があって
あとがき

(あらゆる意味で)世界を解釈する、というのが表現のための第一歩なんだろうと思う。

オススメ度★★★

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時をかける少女

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神林長平 - 膚の下

2006/12/13

膚の下
膚(はだえ)の下
を読んだ。

あなたの魂に安らぎあれ、帝王の殻に続く、火星三部作の完結編。
2004年出版なので、割と最近ですね。
あなたの~が1983年なので、実に20年越しで完結です。

時間的には、どんどんさかのぼっていく感じですね。
逆から読んでも面白いと思います。
ただ、個人的にはやはり、出版順がオススメです。

どの作品も、自己存在について問うていることに変わりは無いのに、
どんどんスケールが大きくなっているようです。
それでいて、主題がぼやけていない。

複数の人間の心情を描いたり、
PABと親子、のような複数のテーマが立つことなく、
ただ、成長し、問い、道を見つける慧慈を描ききっています。

問いに対する回答という点でも、割とぼんやりしていた印象の過去二作に比べ、
ふっきれたような明確さと決意を感じることができます。
ストーリー展開もまとまっていて読みやすく、
まさに20年分の重みがあり、完成度が非常に高いと思います。

わられはおまえたちを創った
おまえたちはなにを創るのか

どんなになりたくても、なれないものがある・・・
であれば、それになろうとするのではなく、
ただ、自分は自分であるべきだ。
膚の下の自分を感じるべし。

全ての、神たるクリエイターへ。

オススメ度★★★★★

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神林長平 - 帝王の殻

2006/11/25

帝王の殻
帝王の殻
を読んだ。

あなたの魂に安らぎあれに続く、二作目。

時間的には「あな魂」の260年前の出来事らしい。

本作のキーワードはなんと言ってもPAB(パブ)。
PAB(Personal Artificial Brain = パーソナル人工脳)は機械で、
人は生まれたときから、このPABを会話でもって育てます。
PABは、いわば内なる自分の具現化です。

PABが無かった時代には、心の中でしていた自己との対話を、
人と話すように行えるわけです。

このアイデアだけでお腹いっぱい。
(一応、テーマとしては「父と子」があるのですが、そういう意味では
なんとなくテーマが2つあったような・・)

主人公恒巧(のぶよし)とそのPABの絶妙なバランスが最高。

PAB:死ぬ前に言ってやりたかったな。『父さん、おれはあんたが憎い』と。だが言えなかった。こわかったからな

恒巧:愛していたんだ

PAB:まさか - 愛していたから、憎いと言えなかったというのか

恒巧:憎しみも愛のうちなんだ

PAB:……そうかもしれないな

恒巧:おまえにそれがわかるのか

PAB:わかるさ

恒巧:おまえはおれだからか?

PAB:おまえといちばん親しい、喋り相手だからだ。

この微妙な感覚の差異は、恒巧とそのPABの間に一定の空白時間、
つまり(恒巧が旅に出ていて)会わなかった時間があったからこそ、
生まれたのだと思いますが、
あなたはわたしだ、というPABもいる中で、
このセリフを言わせる恒巧は(割と)幸せ者でしょう。

こういった、登場人物とそれぞれのPABとの「関係」が、
上手く書き分けられている所にも注目です。

オススメ度★★★

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神林長平 - あなたの魂に安らぎあれ

2006/11/19

あなたの魂に安らぎあれ
あなたの魂に安らぎあれ
を読んだ。

麦撃機の飛ぶ空がいい感じ、と思って本作。
帝王の殻、膚の下に続く三部作の一冊目らしい。

あのですね・・おもしろいです。
ハイペリオンの時もそうだったけど、
もしかしてSFと相性がいいのかしらん。
たまたまいい本に当たってるのかな。

幻に支配された地下に住む人間と、
より人間らしい生活を送る、地上に住むアンドロイドを通じて、
「何故、私は存在するのか」という自己存在意義を問い続けるお話。
永久に続くテーマですね。

存在意義が無いと分かると、人間(の魂)は堕落していきます。
堕落しないのは、少なくとも「存在意義が無い」と確信できる状態ではないからです。

自分の存在意義があるのか無いのか、
その自問行為は存在意義の一つとなりえますが、
魂を疲れさせるものです。

魂が安らぐのは、自分の存在意義について問う必要がなくなるとき。
すなわち、その解を持つこと、
あるいは動物となること。

問うことをやめたり、気づかないふりをするのは、
高等な動物にとどまるようなものです。
それはそれで安らぎを得られるでしょう。

「あなたの魂に安らぎあれ」か・・

オススメ度★★★★

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神林長平 - 麦撃機の飛ぶ空

2006/11/08

麦撃機の飛ぶ空
麦撃機の飛ぶ空
を読んだ。

機械のような人間が、人間のような機械を造ってしまうという、「マシン・チャイルド」はじめ、
人間と機械、文明などをテーマにした短編集。
ちなみに「マシン・チャイルド」等、何篇かはPC雑誌ログインに掲載されていたようです。
(80年代前半ごろ)

# ログインってまだあるのかなぁ、と思ったらあった
# 結構マニアックでおバカな企画が面白かったのだが、今はどうなんだろ。
# まあ、いいや。

そんなワケで(?)コンピューターとかいじってる人には面白い話がいくつかありますが、
それ以外にも、
和風以外のモノが逃げ出していく「和の君」や、
麦を燃料に戦争する「麦撃」、
夏が妙に懐かしくなる「炎帝朱夏」などなど。
非日常的で楽しめる作品ばかり。
「和の君」や「とんでもない猿たち」は、電車の中で笑いそうになったりしました。

著者はこれらのテーマでいろいろ書いているらしいので、
他のも読んでみたいところです。

本書は内容はもちろん、本としてのアートワークや、版組がいい感じ。
ヲバラトモコさんのイラストも良いですね。

オススメ度★★★

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