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笠井潔 - サマー・アポカリプス

2008/10/04

サマー・アポカリプスを読んだ。

探偵矢吹駆シリーズ第二段。
起こる事件を現象学的直感で捉える、という視点が面白くて、これで三冊目なのだが、
どうもミステリーの部分が退屈になってきた。
これは作品のせいというより、自分の趣向のせいだと思う。

ただ、思想の戦いをミステリーに折り混ぜて展開するのは面白いと思った。

普通なら思考実験として終わる話を、ミステリーという枠組みを借りて
現実問題として突きつけるクライマックスシーンはやはり小説ならでは。

で、結局、これは笠井潔のシモーヌ・ヴェイユ批判ということでいいのだろうか。
批判というか、批評、解釈、紹介……

ナチ党によるドイツ国家権力獲得にも匹敵すべき人類的な悪夢の始まりだったとしても、それがいったい何だというのだろう。

オススメ度★★★

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笠井潔 - バイバイ、エンジェル

2008/07/19

バイバイ、エンジェルを読んだ。

矢吹駆シリーズ第一弾。
パリを舞台にしたミステリー。

物事に、唯ひとつの論理的な説明というものは無く、
作ろうと思えば、いくつでも論理的な説明ができてしまう。

そこで、数多くの正しい推論から、
唯一の真実へと至るために、現象学的な観点から物事を俯瞰する。

そんな、哲学ミステリー。
やっぱり、カケルの哲学談義がいいね。

哲学者の密室を読んでいたので、特に新鮮な感動はなかったけど、十分楽しめた。

「できるだけ簡単な生活をする」

それを目指したいんだけど(><

オススメ度★★★

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ラース・スヴェンセン - 退屈の小さな哲学

2008/04/19

退屈の小さな哲学を読んだ。

苦痛なく苦しみ、意志なく欲し、論理なしに思考する - フェルナンド・ペソア

退屈についての歴史や考察がまとめられている。

退屈という現象がどのように現れ、それが何を意味しているか、
など興味深いことを、哲学初心者にも読みやすく書いている良作だと思う。

最後の、著者自身の退屈考察はやや説明不足な気もするけど、
退屈について、どのような考察がなされてきたかを知るヒントがつまっている。

そもそも、退屈というのは昔は贅沢なことで、
人は毎日働き続けなければ生きていけなかった。
だから、退屈できるのは、働かなくても生きていける身分の高い人たちのものだったのだ。

高慢と偏見のエリザベスの言葉

でも、まだ運がいいほうなんだわ、とにかくなにか不足があるってことは

は、貴族として、あるいは人間として、本質的なところを突いているいるように思える。

今や、多くの人が四六時中働かなくても生きていけるようになり、
退屈が一般的に生じるようになった。

いかに生活を楽をするか、それを求めて文明が発達して来た結果、
少しずつ退屈が広がり始めている。

面白いものが欲しいという人間の欲求は、
退屈を紛らせたいという欲求の裏返しかもしれない。

人間にとって興味があるのは不足しているものだけだからである

人間の行為は、「まだ見ぬ何か」を手に入れようとする行為だ。

行為が退屈を生み出しているとしたら、
退屈は、原理的に解消不可能な現象である。

今はまだ、退屈を埋められる別の現象が沢山あるように思える。
しかし、そのような現象を集めて退屈を埋めることが、
そもそも退屈で、虚しいことだと思う人達もいるだろう。

退屈しのぎを超えた行為というものはあるのか、どうか。

オススメ度★★★

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風景

2007/11/07

電車の扉の前に立っていた子供が、外を眺めてつぶやいていた。

「近くは速い…、遠くは遅い…」

子供のほうが現象学的であるというのは本当だと思った。

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森毅 - 数の現象学

2007/09/23

数の現象学を読んだ。

数学(算数含む)を習ったとき、いつの間にか当たり前になっていたこと、
あるいは「こういうものだ」と教えられたことを、検証した本。

マイナス×マイナスはなぜプラスなのか、のような実務的な内容ではない。

数学に現れる現象について、
その歴史・文化・人間を通して概念化を試みている。

そういう意味で、より深い理解に役立つ本である。

あの頃の数学がなんだったのかを知りたい方へオススメ。

数学と言っても、扱っているテーマは加減乗除、小数、分数、比くらいで、
内容的には主に小中学校でやったものだ。
この中にどれだけ深い意味が見出せることか。

数学なんて高校までは暗記科目、
なんてのが堂々とまかり通るほどつまらないことはない。

本書(選書版)には数学史のことと、
数学教育のことも書かれていて、こちらも興味深い。

結局のところ、数学が人生の役に立たなくても、
面白ければ熱中してやるもので、
熱中させられないのは、
教師が「数学は魅力が無い」と語るようなものだ、
といったことが書かれている。

確かにその通り。
そして、それが数学を暗記科目にさせているのだ。

元来、人間というものは、束縛からは知的獲得ができにくくなっている。
思考の自由によってこそ知的な獲得は可能で、その<自由>が逸脱にならないようにするのがカリキュラムの<構造>なのである。

今のゆとり教育って、明らかに<自由>が逸脱になっちゃってる気がする。
本書でも、ゆとりについてちょっと触れてるけど、
その憂いが当たってしまった感じ。

それにしても、森先生の考え方はなんとなく落ち着く。
ややこしくて、つかみどころの無いものを無理に割り切ろうとせず、
そのまま認めようとしてる感じがいい。

数学の世界にあっては、とても珍しい気もするけど。

オススメ度★★★

安田光雄氏のイラストがいい感じ。

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ドストエフスキー - 悪霊

2007/09/17

悪霊を読んだ。

1861年農奴解放令以後のロシアの混沌とした様子を、
実際にあった事件を元に描いた大作。

題名は、ルカ福音書第八章32-36節より。

人に憑いていた悪霊がイエスの許しによって、
人から出て豚にとり憑くと、豚は崖から湖に飛び込み溺死した。
というところから来ている。

本作を読むに当たっては、焦点の当て方が沢山あると思うが、
やはり気になるのはスタヴローギン。

主人公でありながら、どうにもつかみどころが無い人だが、
「スタヴローギンの告白」を読むと納得できることも多い。

問題は、生きていくのが気が狂いそうなほど退屈なことであった。

退屈とか、ヒマっていうのは結構危険なもので、
学問や哲学の始まりはここにあるのだが、
思想というものがしばしば破滅へ至るのは、退屈が根本にあるからだと思う。

退屈から始まった哲学が、退屈に立ち返るわけにはいかないのだ。

「暇つぶし」という概念があり、
しかもそれに夢中になることができるのは、
人間の自己防衛本能のせいかもしれない。

まあ、とにかく、ヒマをつぶせずに、あれこれ考え始めると、
とんでもない結果に辿り着いたりする。

結局のところ、学問が発達するというのは、暇人が増えるからで、
そういう暇人が発達させる学問の行く末には
破滅が待ってるんじゃないかという気にもなってくるので困った。

発見の先に何を発見するのだろう。

神、あるいは無。
(この二つは同一のものに思える)

その事実に人間が耐えられるのかどうか。
少なくともスタヴローギンやキリーロフは耐えることができなかったのだ。

オススメ度★★★

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芸術、人間の勝利

2007/08/06

先日のエントリ「ゲームと芸術」の、
本質は究極的には生と死に集約される、
というところから派生させてまた考えてみた。

なぜ、我々はファミコンに飽き足らず、次世代機を求めたのか。
なぜ、ファミコンにとどまることができなかったのか。

それは、我々が原始時代にとどまれなかったのと同様だ。

より楽に暮らしたい。苦痛から逃れたい。
そんな本能の要求に従った理性は、多くの苦痛を征服してきた。
征服できないものは隠されてきた。
生老病死は常に隠蔽の対象だ。

隠蔽は理性が本能に屈した結果だ。

征服することができず、本能にその現実を突きつけることもできない。

そうして、人間は本質を・・・生と死を覆い隠そうとする。

本能に立ち向かえない理性の弱さ、
それが人間の弱さだ。

しかし、芸術家は、本質を直視する。

本能に逆らって苦しむ。

本能に逆らうのは、ただ理性のなせる業だ。

芸術は人間に課せられた使命であり、特権である。

もしそうであれば、芸術は、崇高であり、偉大であり、あるいは滑稽である。

本質を隠しながら、本質を探そうとする。

本能が隠すものを、理性が探す。

苦しみは理性と本能の叫びだ。せめぎあいだ。

苦しみから逃れよ、と本能が叫ぶ。
本能に逆らって理性が叫ぶ。
苦しみのうちに理性が勝利し、芸術が生れる。

芸術は人間の勝利の証だ。

美は人間の内にこそある。

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ゲームと芸術

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