イチかバチかのやけっぱちみたいなことをやるのを勝負師という人があるが、これは大間違いです。

将棋も人生も波乱に満ちた、破天荒な人。
升田幸三に対してはそんなイメージがあってとっつきづらかったが、本書を読んで変わった。

いや、やっぱり、波乱に満ちて破天荒なんだけれども。
ただ、想像していた以上に物事に対して真剣かつ真っ当な(というと怒られるが)まなざしを持っていると思った。

大阪新聞に連載されたものをまとめたもので、様々な話題で少しずつ区切られているので読みやすい。
もともと、若いサラリーマンを読者として意図しているようで、自分はかなりメインターゲット。

いろんなことを、将棋に置き換えるのが上手で、将棋の駒を人間(役職)に例えた話なども面白いし、
実業界の偉い人にまつわる話もいろいろあって興味深い。

どこかで聞いた、将棋は取った駒をまた使うのは捕虜虐待じゃないかというGHQの質問に反論したというのも升田幸三だった。

 むかし楠正成は川に落ちた敵兵を救い、救われた敵兵は感激して正成の部下になってともに働いた。これが日本精神だと話してやったんですよ。しかも将棋の場合、軍門に降った銀は銀として使う。捕虜の少尉を伍長に格下げして使うんなら虐待かもしれんが、あくまで少尉として一視同仁に使うんだから、ちっとも虐待じゃないと。
 それでもまだわからん顔しとったから、チェスでは王様が助かるために、女王を盾にする。女を犠牲にして王様が逃げだすが、あれはどういうわけかといったら、ずいぶん困った顔をしましたよ。

将棋というフィルターを通すことで、物事の本質を見抜いているあたり、
三冠を達した人の成せる技かと感嘆する。

 一時期、ぼくは、神の前に出てもひるまない、そういう将棋を追及した時代があるんだが、突きすすめたものは、そこにきびしさがあり、鋭さがあっても、ならべてみると、なにか楽しいものがあるもんですよ。
 文章でいえば、なるほど書いてる人は血へどが出るほど苦しんで書いてる。が、出来あがったものに、その苦しみだけしか出ていない作品は、もひとつってものじゃありませんか。
 いのちがけで書いたが、そのいのちがけのなかに遊べるという境地に達したとき、読む人にもまた楽しさが伝わる、そういうのがホンモノだろうと思います。

だから、人生はね、ぼくらが将棋から会得したナニからいうと、遊びにかえらにゃいかんのです。

読み返すたびに発見や深みが出る、そんな本じゃないかと思う。

オススメ度:★★★★