4つ星以上 - しろログ

ショウペンハウエル - 読書について 他二篇

2006/11/15

読書について
読書について
を読んだ。

先日ちょっと書いた「良書を読むための条件」で引用した文が書かれている本。

■読書について

読書をせんとする者、全ての本に先がけて本書を読むべし。

と言いたくなるほど、読書について鋭い指摘がなされています。

人間まず思索を行うことが重要なのであって、
読書はその思索を助けるものでしかない。
しかも、その書の選択を誤れば害にしかならない。

一日を多読に費やす勤勉な人間は、次第に自分でものを考える力を失って行く。

書物は、その著者の思索の足跡であり、
読書は思索の代用品なのです。

自らの思索の泉が枯れた時に、読書に頼るのは仕方ないとしても、
読書のために思索を退けるのは大変な誤りであると言います。

自分自身、ここ最近意図的に読書量を増やしつつあったのですが、
その割に空虚なものを感じていたのは、ここに原因があったのかもしれない。
無意味な多読は害になるという警告に早く気が付けたのは幸いでした。

読書に際しての心がけとしては、読まずにすます技術が非常に重要である。

特に日々出版される新書、途端に何十万部も増版を重ねる本には
手を出さないことだとあります。これらの本の寿命を考えれば、
読むべき本はまだ他にあるはずです。

■著作について

著作についても厳しいことが書かれており、
文学に対する並々ならぬ決意と自負が伝わってきます。

個人的なメモ書き程度のブログとは言え、
文を書いている自分としても耳の痛いことばかりです。

すぐれた文体たるための第一規則は、主張すべきものを所有することである。

当たり前なのですが、この「主張」をさらに
誰にでも分かるように書くことが必要だと説いています。

多くのもったいぶった言い回しは、批判されたときの逃げ道であり、
裏があるような言葉遣いは、無知に対する隠れ蓑だということです。

また、文章は簡潔に書くのが良いとしています。
ただし、この「簡潔」を履き違え、必要なことまで削ってしまうのは、
やはり批判に対する逃げ道であったり、
足りない部分を読者の考えに任せるといった、
虫のいい考えにつながります。

■この本自体が名著

名著が常にそうであるように、100年経っても
現代の話題のように読めるところが素晴らしい。

書や文に触れる人(要するにほとんどの全ての人)は、読んでおくべき一冊。

オススメ度★★★★★

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デュマ・フィス - 椿姫

2006/11/03

椿姫
椿姫
を読んだ。

三銃士やモンテクリスト伯などでお馴染みディマの息子による小説です。

一世を風靡する社交界の娼婦マルグリットと、彼女を愛する青年アルマンの物語。

お金持ちの貴族を相手に、放埓な生活をしていたマルグリットが、
アルマンの愛によって、初めて恋をするようになります。
しかし、娼婦という立場からマルグリットは代償以上の苦しみを味わい、
アルマンも最後まで彼女は娼婦だった、という意識を捨て去ることができませんでした。

世間から見れば蔑まれているマルグリットが、最も強い人間として描かれています。
最初は徒に日々を浪費していたマルグリットが、
アルマンによって心に変化が現れ、最後もまたアルマンによって
高潔の人となっていく様子がすばらしい。

結局、アルマンはマルグリットを愛してはいたものの、最後まで赦しを請い、
マルグリットは最後まで赦し続けました。

序盤に描かれる、やや大げさなアルマンの様子と、
マルグリットの遺した手紙が、最後の最後に生きてきます。

この作品が24歳の時の作品だとは・・・

どんなに美しい決心だって、ばかばかしい鎖だけど、鉄のように丈夫な鎖でしっかりこの世につなぎとめられていて、容易なことじゃ、その鎖をたちきることはできないのよ。
- たびたび、アルマンに忠告するプリュダンス。

オススメ度★★★★

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カテゴリ:, 小説, 4つ星以上, 恋愛

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「おもしろい」のゲームデザイン - 楽しいゲームを作る理論

2006/09/17

「おもしろい」のゲームデザイン
「おもしろい」のゲームデザイン - 楽しいゲームを作る理論
を読んだ。

皆さん、三目並べはやったことありますか?
井の字に○×というアレです。僕はやりました。
小学校のころは休み時間になれば、
みんな黒板に向かって狂ったように○と×を書きました。

そして、誰に教わるでもなく、最善の手を尽くせば引き分けに終わる、
ということに気づき、卒業するころには誰もやらなくなりました。

ゲームは未だ、この三目並べの域を脱していないものが多いようです。

■脳の働き

本書は「これを読めばゲームデザイナーになれる!」といった類の本ではありません。
どちらかと言うと、というかほとんどアカデミックな内容です。

が、ほとんど全てのページにデカデカと挿絵があります。
たぶん半分は絵です。すぐに読みきれます(笑)

本書では、人間の脳がいかに働くか、という所からスタートします。

脳はパターンの認識にかなり多くの労力を費やします。
しかし、脳は毎回毎回パターン認識作業をするわけではありません。
一度認識できたパターンはチャンクとして蓄積されます。
つまり、一度会得したパターンはもう特別なことをしなくても認識できるわけです。

自転車の運転したり、学校への道のりを通うことがそれです。
しかし、脳は怠惰なのかと思いきや、そうではありません。

脳が持つ学習への欲求を過小評価すべきではありません。

脳は常に何かを学ぼうとしています。

おもしろさとは単に、学ぶことの別名なのです。

学校での勉強がつまらないと思うのは、
情報の伝え方、つまり先生が良くないから、ということになります。

それでも一旦パターンを習得してしまえば、そのゲーム(学習)はつまらなくなります。

■抽象化する

位相数学(トポロジー)の見地からゲームを考えるのはとても役立ちます。

トポロジーについて、本書では

形状を「押し潰した」だけでは変化しない形状の特性に注目して研究する幾何学の一分野

と説明しています。

ある立方体を望むように押しつぶしたり、広げたりできれば、
球にするのはたやすいが、穴を開けなければドーナツ状にはできない。
しかし、ドーナツ状のものは、簡単にポット(ふたや取っ手の無いもの)に
変形させることができる。

そういう意味で、立方体と、ドーナツ状のものとは根本的に異なるということでしょう。

立方体を広げたり、潰したりして表層を変えたゲームは沢山存在します。

ゲームにもっとはまり込めば、そのゲームを支える土台を見つけ出し、確かめるために、そこを切り出すのが、かなりうまくなるでしょう。

重要なのは、ゲームの本質を抽象化し、
「チャンク」(冒頭参照)として記憶された部分を理解することだと言っています。

つまり、チャンク化されてしまったものは
表層を変えたくらいでは、やがて飽きられるということだと思います。

構造に穴を空けることを革新的である、と言います。

■具体的には、どうあれば良いのか

いくつか指針があります。

・挑戦する前に準備しなければならないですか?
・異なったやり方で準備しても、成功することができますか?
・挑戦が発生する環境は、その挑戦に影響を与えますか?
・プレイヤーが受ける挑戦を定めた確固たる規則が存在しますか?
・その規則一式は、何種類もの挑戦に対応できますか?
・その挑戦に耐えるためにプレイヤーは複数の能力を持つことができますか?
・難しさが増した場合、その挑戦に耐えるのに、プレイヤーが複数の能力を持たなければならなくなりますか?
・能力の使用に関連した技術が存在しますか?(もしないなら、チェッカーにおける駒の動きのように、それが、そのゲームで基本となる「動き」に相当するものですか?)
・挑戦を克服するのに必要となる、いくつもの成功を辿る道筋が存在しますか?(言い換えるなら、成功は唯一の結果だけをもたらすようにすべきではありません)
・熟達したプレイヤーが簡単な挑戦に取り組んでも何も利益を得られないですか?
・挑戦に失敗したら、最低限、プレイヤーは再びやり直さなければなりませんか?

以上の質問のどれか1つでも答えが「いいえ」になるなら、そのゲームシステムは、おそらく、作り直す必要があるでしょう。

本文中でかなり具体的に書かれていたのがこの部分だと思います。

■ゲームはどこへ向かうべきか

ゲームが、領地や、照準や、攻撃時期といったものに関するパターンを教えるだけのものから変化するべきときなのです。

中盤?後半では、ゲームをさらに大きな枠でとらえ、
芸術へと昇華させていくべきという、筆者の持論が展開されます。

ゲームはまだ成熟しておらず、それはあたかも
印象・抽象画の絵画、遊園地に置かれていたキネトスコープ
若者を堕落させると言われたジャズ・ロック、等が歩んだ道のように、
一段低いものとして認識されています。

このことをゲームに携わる者はよく理解し、
自らの信じる方向へとゲームを動かしていくべきでしょう。

そうして時を経て残るものが芸術となっていくはずです。

オススメ度★★★★

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Head First デザインパターン

2006/08/31

Head Firstデザインパターン
Head Firstデザインパターン - 頭とからだで覚えるデザインパターンの基本

最近どうも設計に無駄が多い、というかスマートでないなと感じることが多々あり・・
やはりパターンは押さえておかないとダメかなと思い読んでいます。

もっと堅めの本にしようかな、と思って本屋をウロウロしていたら、
こっちが目に止まって購入。

まず、どうしたら効果的に学習できるのか、という内容から始まり、
いろいろと趣向を凝らしてデザインパターンの解説が進みます。

そしてとても分かりやすい(ように思える)。
自己流設計やってきて、なんとなく閉塞感感じている方は是非。

オススメ度★★★★

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カテゴリ:, 4つ星以上, 技術

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ダン・シモンズ - ハイペリオン

2006/07/30

ハイペリオン
ハイペリオン
を読んだ。

これはやばい!
ジャンルはSF小説。
なんかSFや未来フィクションって、あまり興味無かったのですが、これは面白い。

あとがきにもあるのですが、「序破急」な構成が良い感じ。
最初、風景などの描写がしつこい感じなのですが、
中盤から終盤まで、読み出したら止まらない。それが6話続きます。

特に面白いと思ったのは「時間」の感覚。
一つの惑星にずっと住んでいるのと、船内生活長い人とでは、年のとり方が違うんですよね。
というのも、宇宙を移動するのに、遠い惑星へ行く時などは、冷凍睡眠するか、
光速に近い速度で移動しなければならず、
どちらの場合も、何もしない場合に比べて年をとるのが遅れるわけです。

そうすると、船の人にとっては1ヶ月ぶりに来た惑星でも、
その惑星の現地時間では10年が過ぎているということもあります。

作中では、標準時間、船内時間、現地時間などが出てきますが、
広い宇宙の中に存在する、この時間感覚のごった煮が面白い。

皆が「今」「ここ」に集まっていることが奇跡的、とでも言いますか・・
絶対空間や絶対時間なんてものは無いんだ、というのが妙にリアルに表現されています。

けど、こういうネタはある程度、前知識がいるんじゃないかなぁ、と思ったり。
自分は以前、宇宙やら素粒子やらちょっとかじっていたので、
なんとなく想像しながら読めたのですが、それ無しだとどうなんだろう・・。

ちなみに現在、続編『ハイペリオンの没落』に突入してます(笑)。

オススメ度★★★★

関連記事:
ダン・シモンズ - ハイペリオンの没落

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カテゴリ:, 小説, 4つ星以上, SF

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吉岡洋 - 「思想」の現在形―複雑系・電脳空間・アフォーダンス

2006/04/01

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「思想」の現在形
を読んだ。

現代の、知識・情報の流れと、その根底にある言語にまつわることが、哲学的視点から書かれています。

本書は「知識の異なった分野間にリンクを張ること」が目的となっており、一つの論を展開するわけではありませんが、その分全体を網羅したような感じになっています。

最初に言っておくと、万人向けのものではないですが、かなりオススメです。
哲学系+Web系な人にはピッタリで、ぜひ読んで欲しいと思います。
小さな段落で小分けされているので、読みやすくなっています。

97年に書かれた本ですが、インターネットの本質を突いていて、今の状況を当てはめながら読んでも違和感ありません。

インターネットの本質というか、そもそも言語の本質的な部分をインターネットが突いているのか・・

ともかく、インターネット・webの出現というのは、知識と情報の在り方にとって革命的であることは間違いありません。
(なんて言葉は何年も前からありますが、それが確かにそうだと思えるようになります)

Web以前は、知識を得るとしたら、師匠の教えか、書物しかありませんでした。
知識は完全に限定されており、個々人にとっては圧倒的に不足状態だったのです。

しかし、Webの登場によって、情報の流通量は爆発的に増加しました。

人類はいまだかつて経験したことのない「情報過多」の世界に生きることになったのです。

インターネットをある程度利用している方は分かるかもしれませんが、今Webはどこか混沌としたところがあります。
それは情報過多という未曾有の事態に、様々な人が様々な方法でアプローチしている結果です。

何せ人類史上初めてのことですから、定石が無いのです。

■対象から環境へ

黎明期からちょっと前までは、webサイトは電子ポスターみたいな感じがありました。
企業も個人も、自分のことを書いたポスターを貼り付けていたイメージです。

ポスター(ホームページ)があって、閲覧者がそれを見るという図式です。

が、そろそろそういう使い方は終わりを見せ始めています。
最近よく言われるweb2.0に代表される概念が良い例ですが、
2.0というのは、対象だったwebが環境としてのwebになることなのかなと思います。

うーん…「なる」というのは曖昧ですね。

webは何も変わっていません。10年たってもHTTPで通信し、HTMLなどでマークアップされた文書を流し続けています。

2.0はwebそのものの変化ではなく、認識の変化です。

今までは、webという世界に対し、使う側としての自分が切り離されて考えられていました。

それが「web」と「webを使うという行為」は切り離せなくなってきた。

例えば、Googleで検索することは、もはや単に文書を探すことではありません。
検索された語はフィードバックとしてGoogleに蓄積されます。
蓄積されたデータは別の誰かが検索を利用する時に利用されます。

使う本人にその自覚は無くても、その人は確実に「環境」の一部になっています。

このことに気がついている人は既に沢山いるはずです。

そのような人が作ったサービスが、「環境」に馴染んだ人にとっては面白く、
そうでない人にとっては、よく分からないものとなるのは、必然かもしれません。

それは良いとか悪いとかいう話とは別の、認識の違いです。

オススメ度★★★★

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クレイトン・クリステンセン - イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき

2005/12/03

イノベーションのジレンマ
イノベーションのジレンマ
を読み終えました。

すごい・・・

この人そのものが、すごい(笑) - 気になる方は本書解説参照

こんな人が書くものが、しょぼいワケがない!
今まで混沌としていた所に秩序が生まれたというか、
一筋の指針、見方を与えてくれた感じです。

この本を読めば、新技術、いや技術に限らず、
あらゆる物の出現にエキサイトできるようになるかも!

就職活動中の皆さんにも超オススメ(ちょっと遅いか!)。
企業を「ネームバリュー」「なんとなく」のモノサシで見ていた方には、
超強力理論仕様のモノサシをゲットできること間違いなしです。

世の中が面白くなる一冊。

オススメ度★★★★★

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