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日々巡り会ったものの感想・レビュー

Category: 本 (page 2 of 22)

升田幸三 – 勝負

イチかバチかのやけっぱちみたいなことをやるのを勝負師という人があるが、これは大間違いです。

将棋も人生も波乱に満ちた、破天荒な人。
升田幸三に対してはそんなイメージがあってとっつきづらかったが、本書を読んで変わった。

いや、やっぱり、波乱に満ちて破天荒なんだけれども。
ただ、想像していた以上に物事に対して真剣かつ真っ当な(というと怒られるが)まなざしを持っていると思った。

大阪新聞に連載されたものをまとめたもので、様々な話題で少しずつ区切られているので読みやすい。
もともと、若いサラリーマンを読者として意図しているようで、自分はかなりメインターゲット。

いろんなことを、将棋に置き換えるのが上手で、将棋の駒を人間(役職)に例えた話なども面白いし、
実業界の偉い人にまつわる話もいろいろあって興味深い。

どこかで聞いた、将棋は取った駒をまた使うのは捕虜虐待じゃないかというGHQの質問に反論したというのも升田幸三だった。

 むかし楠正成は川に落ちた敵兵を救い、救われた敵兵は感激して正成の部下になってともに働いた。これが日本精神だと話してやったんですよ。しかも将棋の場合、軍門に降った銀は銀として使う。捕虜の少尉を伍長に格下げして使うんなら虐待かもしれんが、あくまで少尉として一視同仁に使うんだから、ちっとも虐待じゃないと。
 それでもまだわからん顔しとったから、チェスでは王様が助かるために、女王を盾にする。女を犠牲にして王様が逃げだすが、あれはどういうわけかといったら、ずいぶん困った顔をしましたよ。

将棋というフィルターを通すことで、物事の本質を見抜いているあたり、
三冠を達した人の成せる技かと感嘆する。

 一時期、ぼくは、神の前に出てもひるまない、そういう将棋を追及した時代があるんだが、突きすすめたものは、そこにきびしさがあり、鋭さがあっても、ならべてみると、なにか楽しいものがあるもんですよ。
 文章でいえば、なるほど書いてる人は血へどが出るほど苦しんで書いてる。が、出来あがったものに、その苦しみだけしか出ていない作品は、もひとつってものじゃありませんか。
 いのちがけで書いたが、そのいのちがけのなかに遊べるという境地に達したとき、読む人にもまた楽しさが伝わる、そういうのがホンモノだろうと思います。

だから、人生はね、ぼくらが将棋から会得したナニからいうと、遊びにかえらにゃいかんのです。

読み返すたびに発見や深みが出る、そんな本じゃないかと思う。

オススメ度:★★★★

鈴木三重吉 – 桑の実

久しぶりに小説読んだ。
なんとも言えない小説。

大きな事件や展開があるわけでもなく、ただ淡々と、そして穏やかに時が流れる物語。
結構、本を読むと、いろいろ考えさせられたりすることが多いけど、
そういうのが無いことがちょっとした衝撃だった。

ある意味とても癒し系。

ただただ理想のひとを書こうと思って書かれたものらしいが、
三重吉はこれを書いた当時、かなり精神的に参っていたとか。

ちょっと信じがたいが、分かる気がしないでもなく……

PEACH-PIT – ローゼンメイデン 1

バーズでは不完全燃焼に終わってしまった同作品がヤングジャンプで復活。
シリアスな流れにコミカルさが加わった内容はそのまま引き継がれている。

ただ、単にバーズからの続きではなく、
「まきますか まきませんか」で「まきません」を選んだジュンのその後の話から始まる。

大学生になったジュンの背景物語と、真紅、水銀燈による現在の状況説明などが描かれ、
まいた世界が本流、まかなかった世界を「可能性の無くなった」支流世界として説明されている。

可能性が無いという状況を打破するため、ジュンが目を向けたのは……

という所で一巻終わり。

期待を裏切らない内容で、
バーズ時代好きだった方は買って損無し。

関連リンク:
もものたね**ローゼンメイデン

初心者が分かりやすいと思う将棋の本

将棋の勉強は、実際指す(並べる)ことと、棋書を読むことがほとんど。

そこで、初心者が分かりやすいと思った本をいくつかご紹介。
初心者である自分が言うのだから間違いない。
(と、自信たっぷりなのが、逆に不安になるかもしれないけど)

佐藤康光の寄せの急所 囲いの急所 (NHK将棋シリーズ)

終盤の攻め方など。
一つの攻め筋につき、見開きページ、3つの図を基本に構成されていて、
さまざまな手筋、狙いどころが分かりやすく解説されている。
終盤の攻め方がいろいろ覚えられる本。

羽生善治 – 上達するヒント (最強将棋レクチャーブックス(3))

具体的な手筋というよりは、もっと全体を俯瞰したような、将棋の考え方の本。
目次は以下の通りで、なんとなくイメージがつかめると思う。
・基本方針と形勢判断
・構想について
・歩の下に駒を進める
・駒がぶつかったとき
・位取りについて
・主戦場について
・玉の安全度について
・さばきについて
・厚みについて
・スピードについて
・攻めの継続
・進展性について
・陣形について
具体例として扱われているのがアマチュア同士の対局なので、
当然疑問手が多く現れるが、その疑問手の後、どう進めていくかが書かれている。
疑問手後、以上先(後)手良し、で終わらない点がとても参考になる。

藤井猛 – 四間飛車を指しこなす本〈1〉 (最強将棋塾)

表題通り、四間飛車の本。
ほとんどが次の一手、あるいは三手を考えるスタイル。
全三巻で、これをマスターすれば実戦で手が見えなくて困ることはない、
と書かれている通り、細かい変化も書かれている。
例えば同じように仕掛けられた場合でも、
9八香の場合、4六歩の場合などでどうか、というのを意識させてくれる。

以上三冊。
他には、決定版 駒落ち定跡―八枚落ちから香落ちまでとか。

絶対量が少ないので、他に沢山あるはずだけど、今現在そんな感じ。

ついでなので、ちょっと初心者には早かったと思う本も。

谷川浩司 – 光速の寄せ〈1〉振り飛車破りの巻 (Super series special (Volume 1))

光速の寄せシリーズ。最初のほうの基本編などは良いが、
途中からは段位者向けのようだった。
読みこなせるようになりたい本。

羽生善治の終盤術(1) 攻めをつなぐ本 (最強将棋21)

中盤以降~終盤の攻めの本。
とても難しいというわけではないが、数手読む問題も多く、上級者向けのような感じだった。
ただ、中盤以降の解説が豊富なので、棋譜並べをしながら、
手の意味を確認したい時に使えるように思う。

それにしても、本の種類が多い……
この間、本屋行ったら文庫サイズの本も結構あったけど、
とにかく文字が小さくて読みづらいのが難点。
あと分厚いのも(笑

関連リンク:
棋書ミシュラン!
棋書購入検討・感想スレのまとめ

笠井潔 – サマー・アポカリプス

サマー・アポカリプスを読んだ。

探偵矢吹駆シリーズ第二段。
起こる事件を現象学的直感で捉える、という視点が面白くて、これで三冊目なのだが、
どうもミステリーの部分が退屈になってきた。
これは作品のせいというより、自分の趣向のせいだと思う。

ただ、思想の戦いをミステリーに折り混ぜて展開するのは面白いと思った。

普通なら思考実験として終わる話を、ミステリーという枠組みを借りて
現実問題として突きつけるクライマックスシーンはやはり小説ならでは。

で、結局、これは笠井潔のシモーヌ・ヴェイユ批判ということでいいのだろうか。
批判というか、批評、解釈、紹介……

ナチ党によるドイツ国家権力獲得にも匹敵すべき人類的な悪夢の始まりだったとしても、それがいったい何だというのだろう。

オススメ度★★★

関連記事:
笠井潔 – バイバイ、エンジェル
笠井潔 – 哲学者の密室

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