教養・その他 - しろログ

夏目漱石 - 私の個人主義

2007/12/15

青空文庫にあった「私の個人主義」をさくっと読んだ。

漱石が自分の道をどう歩いたかについて。
学習院大学での講演なので、要点だけが語られている。

今の生活よりも、自分に合った生活があるんじゃないだろうか。
チャンスがあったら、そちらへ飛んでやろう、という気持ち。
そういう根無し草のような感覚を持っていたと言うのは分かるなー。

それは結局、自己本位になりきれていないということに気づいて、
悟ったように道が開ける、という流れ。

自己本位というのは、自分で考え、自分で判断し、自分なりの価値を持つことだ。

他人の説明で自分自身を納得させない。
疑問を持ったら自分で調べて、考えて、判断する。
他人の説明は文字通り「助言」に過ぎない。

と、言われてみれば、なんのことはない。
とっくにそう思ってるぜ、なんて思いながら、
気が付くとフワフワしてる自分に自戒の念をこめつつ、再確認。

自分にとって、漱石って苦悩の人っていうイメージがあるんだけど、
苦悩のうちに道を見出す、みたいな所が好きだな。

たぶん頭の中で、あーでもない、こーでもない、というのがものすごくあったと思う。
そして、そういうのが色んな作品中で描写されてる。

行動だけ見れば至って普通なのに、そこに至る思考プロセスの描写が面白いんだな。

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村井弦斎 - 食道楽 夏の巻

2007/05/20

食道楽 夏の巻
食道楽 夏の巻を読んだ。

随所に中川の持論が展開される。

お登和さんの元へ料理修行に来ている
子爵の娘、玉江さんが縁となり、子爵の家に招かれた。

自慢の邸宅を見学するという時に、
中川は、まず家の中心点を見せてくれと言い、
子爵が中心点とはどこかと聞くと、
一家の者が毎日口にする料理を作る場所、台所だと言う。

多くの貴族の例にもれず、
お客用の部屋、庭、自身の風流生活にはお金をかけるが、
台所はと言うと、最も低予算、という造りのお屋敷。

滅多に使わない客間や庭は立派なのに、
人の基礎たる食べ物を扱う場所が粗末なのはこれいかに、
という中川の指摘に自分の愚を知り、ただちに食を見直す決意の子爵。

そして、遂には、中川のような人が家庭を幸福にできる男ぞ、と思い、
「中川さんに、女はどういう夫を持てば幸せか聞いてみなさい」
と玉江嬢に言う。

もちろん、玉江さんもそれがどういう意味かを悟る。

「だつても爾んな事は」
と顔紅らめて横を向くに涼風一陣、庭より桂香を送り来る。

いいじゃないですか。

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村井弦斎 - 食道楽 春の巻

2007/05/17

食道楽 春の巻
食道楽 春の巻を読んだ。

明治時代の料理小説。
今読んでるのは復刻版だけど、仮名使いはたぶん当時のもの。
これがまた独特の味わいがある。

小説なんだけれども、実用的な家庭料理の教えが光る。
当時は上流社会でも嫁入り道具の一つになっていたほど、定評のあるものだったらしい。

確かに、料理にあまり興味の無い僕も何故かおもしろく読める。

単に料理Tipsに留まらず、家庭料理の精神も説いていて、
「食道楽」という表題ではあるが、
一般的な道楽を批判する意味がこめられているように思う。

また、基本は料理の話題だが、
小説、啓蒙書としてもなかなかのもので、そちらの展開も目が離せない。

エセ風流が国を滅ぼすという、風流亡国論、
感情的な判断もまた国を滅ぼすという、感情亡国論、
上辺だけではない、心の礼
というような主張を、各登場人物を通して展開させる。

新たな文明を人間らしい理性で切り開いていこうという、
当時の人が新しい時代の風を感じていたこと、
そういう雰囲気がよく伝わってくる。

多くの名作がそうであるように、この作品も普遍性を持っている。
100年も前に書かれたものなのに、
「これ今の時代にもあてはまるな」
というもの。

こういう本がごく一部の人にしか読まれないというのは残念だと思う。

大原「(略)そんなに料理の秘伝を人に教えては何処からかお小言が来ませんか」
お登和「(略)秘伝秘伝と云って隠すのは狭い心、(略)こういう事はお互いに教え合って我邦(くに)の料理法を進歩させるのが人の道ではありませんか」
(略)
野蛮の世には何事も秘伝多し、秘伝は文明の大禁物。

これ、オープンソースとかに触れている人はすごく実感できるんじゃないかと。
当たり前のことなんだけど、この時代にズバリ言っちゃうのもすごいな。

もう一つの見所は、やはり大原とお登和さんの関係。

大食漢の大原は、器量よし料理よしのお登和さんに一目ぼれ。
最初は気味悪がってたお登和も、大原が誠に心の礼というものを知っている
数少ない、誠実な人だと知ると、だんだんと心惹かれ始める。

友人らの助力もあって、いよいよ結婚かという時に、
親が決めた結婚相手、それも田舎育ちの大女がやってきて・・

という展開。

まとめると・・・
冷蔵庫とかそういう便利なものが無かった時代の話なので、
料理法などはだいぶ変わった所があると思うけど、
・家庭料理の精神
・新時代への啓蒙
・大原とお登和の物語

これで十分価値のある、1粒で3度おいしい、みたいな、
とにかくオススメなわけです。

オススメ度★★★★★

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樋口一葉 - たけくらべ

2007/04/17

たけくらべを読んだ。

われから、わかれ道、たけくらべの三篇。

明治という、まだ女性にとって厳しい時代に生き、
その流れに飲まれざるを得ない運命・現実。
そういう哀しい儚さが描かれている。

何時までも何時までも人形と紙雛(あね)様とを相手にして飯事(ままごと)許(ばか)りして居たらば嘸かし嬉しき事ならんを、ゑゝ厭や厭や、大人に成るは厭やな事

遊女の姉を持ち、小さい時から自分もまた遊女になる運命の美登利。
この言葉が単なる子供の言葉ではないことは容易に分かる。

文章は、雅俗折衷文体。
地の文が雅文、会話が俗文で、延々と続く。
ぼーっと読んでると、セリフなのか何なのか分からなくなる・・

難しいのぉ・・勉強しないと、意味がよく分からない。
このころの作品はもう現代語訳があるらしく、
今出ているものは、ほとんどそうなのかな・・

普段見ない言葉だけに、日本語の豊かさなど、新鮮に感じた。

今すぐ樋口一葉を読みたい方はこちら
樋口一葉作品リスト@青空文庫

オススメ度★★★

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ニーベルンゲンの歌

2007/01/20

ニーベルンゲンの歌
ニーベルンゲンの歌
を読んだ。

作者不明。
英雄ジーフリト(ジークフリート)をめぐる民族的悲劇をうたったドイツの長篇叙事詩。

ジークフリートの死とそれをめぐる復讐劇。
あらすじなど
登場人物とかいろいろ

話は、「因」が語られると、すぐ「果」も書かれる、というネタバレ展開ですが、
それでも、本当にそうなるのかな、といった感じで読めます。

名作らしく、物語自体は特にひねったものではないのに、力強いダイナミクスがあり、
特にクライマックスの戦闘シーンは圧巻。
リュエデゲールの名誉を賭けた戦いは涙を誘います。

とまあ、内容はこんな感じで面白いのですが、
もう少し考えてみます。

「名誉を賭けた」と言えば、
潔くて、かっこいいので、常に憧れと賞賛の的になりそうですが、
この物語では、そのために多くの人にとって悲劇となります。

王妃クリエムヒルトにしても、夫ジーフリトのためとは言え、
一族はじめ、ついには自分の身をも滅ぼすことになるのです。

「名誉や貞節もヒューマニズムの基盤から離れると、こうした悲劇となる」
と解説にはありますが、この場合のヒューマニズムというのは何なのでしょう。

それは社会生活を送る上でのバランス感覚みたいなものかなと思います。
でも、これは恐らくほとんどの人が持っているものなんですよね。

だから、普通悲劇的なことにはならない。

でも、こういうバランス感覚を保つのって、結構疲れるし、
優柔不断に陥ったりしてかっこ悪い気がするものです。
だから、名誉・貞節といった一つの基準でもってスパッと生きている人が
かっこよく、かつ楽そうに見える。

そういう心理が巧みに操られると悲劇的なことになるわけです。

名誉、誇り、そういったものはバランス感覚を保ったうえで抱えるものであるべきで、
なんかモヤモヤしてるの取っ払って、今日から名誉に生きる、
とかそういうのはまずいということです。

まあ、大抵は、名誉一筋なんてできないので、いいんですけどね。
たまにできる人がいても、一人なら大したことはないですし。
例え一瞬でも、大勢の人が名誉一筋になれちゃうと怖いんだと思います。

オススメ度★★★★

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城山三郎 - 黄金の日日

2006/07/16

黄金の日日を読んだ。

戦国の世を、堺商人の目線で描写しています。

時代の先を読んで投資することの大切さは今も昔も変わらないですね。
ただ、この時代は一歩間違えばお家断絶もありうる、まさに命がけの投資です。

為政者と時代の移り変わりを感じることのできる作品です。
読みやすくてオススメ。

オススメ度★★★

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