行人を読んだ。

一郎の苦悩を弟や、一郎の友人の視点から描いた作品。

一郎は苦悩を脱したい、あるいは脱することができるはずなのに、脱しない、そんな人だ。
そして、この苦悩からは逃れられない運命にある気がする。

なぜという具体的な理由は無いのだが、
自分と一郎のシンクロ率がかなり高い気がするので、なんとなくそう思うのだ(笑)

以前、漱石作品が好きな理由に、登場人物中に自分と似た人が出てくるから、
というのを挙げたが、今回は一郎である。

苦悩の原因を探り、解明しようとしてまた苦しむ。
しかも解明したところで、どうもならないのはよく分かっている。

途中出てくる比喩がうまい。
「山がある。その山を呼び寄せるが、山は来ない。だから自分のほうから山へ行く。」
一郎は山を呼び続け、疲れ果てるのである。
そして恐らく自分のほうから山へ行かなくてはならないことを知りつつ、
それでも呼び続けることをやめられない。

周囲から見れば、結局ただの厄介者である。
その厄介な様子が、他人の視点を通じて、表面から内面までよく表現できている。
個人的には結構好きな作品。

ただ、よく分からない人にはよく分からない本なんだろうな、という気もする。

兄さんがこの眠から永久覚めなかったらさぞ幸福だろうという気がどこかでします。同時にもしこの眠から永久覚めなかったらさぞ悲しいだろうという気もどこかでします

オススメ度★★★

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