死して咲く花、実のある夢を読んだ。

この世には二種類の人間がいる。
死んでいることに気づいている者と、そうでない人間の二種類。

量子力学的解釈と、仏教思想を融合し、
人間の生と死、意識の問題について思索したSF長編。

量子力学ネタがあると気づく後半までは、ちょっと退屈な展開だった。
今見てる夢が夢で無い証拠は…、みたいな、
夢オチがちらついて疑心暗鬼になりつつも、
ネタに気づいてからはラストまで一気に読めた。

ただ中盤ぼーっと読んでたので、
作者の考えがしっかりつかめてないような気もする…

とりあえず、量子力学にまつわるエピソードの一つ、
「シュレーディンガーの猫」は知ってから読んだほうが面白い。

一応ここでも、シュレーディンガーの猫の話を超簡単に書いてみる。
ただし、かなり歪曲されているので、気になる人はググるか、
量子力学の雑学本でも読んでみるといいと思う。

シュレーディンガーの猫というのは、実験のことである。
ただし、頭の中だけで行う実験で、実際に行われたわけではない。

・予備知識
1.素粒子レベルの極微の世界では、量子というものが存在する。
2.量子は観測して初めて、1つの粒子として存在することが確認される。
3.観測するまでは粒子ではなく、単に「粒子が存在する確率」である。
これは粒子が飛び回っているとか、霧のようになっているという意味ではなく、
粒子の存在そのものがもやっと広がっているイメージ。
これは日常のものでは例えられない概念なので、そういうものだと思うこと。

・実験道具
1.毒ガス噴射機能付きの中が見えない箱
2.猫

重要なのは、この箱。
実は、1つの粒子の状態次第で毒ガスが噴射されるのである。

ところが粒子は、観測されるまでは量子であり、存在の確率でしかない。
つまり、箱を開けて観測し、結果を確定するまでは、
毒ガスが噴射された状態と、されてない状態が同時に成り立っていることになる。

さて、そんな箱の中に猫を入れて一時間。
今、猫は生きているのか死んでいるのか…
いや、正確に言えば、生きてもいるし、死んでもいるのである。

本作では、そんな「箱の中」を描写したような内容になっている。
もちろん、クライマックスは箱を開けて観測するシーンである。

以下、ネタバレ。

「結果」は観察者によるのでなく、
自らの意識・意思によって収縮させることができるとし、
「箱の中」にいた三人は、
一人は死を悟って彼岸へ行き、
一人は生を確信して現世に戻り、
一人は迷いを以って生まれ変わって現世に戻る。

という結果が観測されるに至る。

秋月が箱、
三人が猫、
マタタビ装置が毒薬の機械、
オットーが引き金となる粒子(量子)、と考えると結構つじつまが合うかもしれない。

しかしまあ今回は、神林氏のお話に付き合ってみた、という感じだなぁ。
あまり具体的な物理学をネタにしたのはあまり好きじゃない。
嘘っぽくなるというか、本当に無邪気な想像になるから。

ただ、僕にとって本書は、
「自分の思想を自分の型で表現する」のがどういうことか、
というのが分かる一冊だった。

人間というのはそのように世界を解釈したり想像する能力があって
あとがき

(あらゆる意味で)世界を解釈する、というのが表現のための第一歩なんだろうと思う。

オススメ度★★★

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