※ネタバレあり。

先日クリアしたトラスティベルの何が良くなかったか考えてみる。

最初に言っておくと、映像と音楽、それを支える技術力は最高だ。
ブーニン氏のショパンを5.1ch非圧縮で録音している点も見逃せない。

というわけで唯一にして最大の難点、シナリオについて考える。

■現実世界(現代日本)へのメッセージを語るキャラ

キャラのセリフがあからさまにプレイヤーの世界へ言及している。
プレイヤーにはゲームの世界へ入り込んでもらわないといけないハズなのに
逆に現実へ突き戻している。

ゲーム中だけでは物足りなかったらしく、
エンディングではキャラが総出でプレイヤーを問い詰める。
小一時間問い詰められる。

オープニングであれだけ引きずり込んでおいて
エンディングで突き返すとは恐れ入る。

ファンタジーの魅力は、本質をそのままに、
表層(現象)だけを変えていることにあると思う。

本質的に現実世界とリンクしていれば、
後はその世界観を徹底して完結させれば良い。

そのリンクを発見するのはプレイヤーの役割であり目的だ。

プレイヤーは、その世界での本質を現実世界にも発見し、
あるいは現実世界の本質をゲームの世界に発見して感動する。

その中のキャラが、自分の世界を突き破って、
こちらの世界に言及してくる時点で、相当プレイヤーを愚弄している。
ファンタジーの意義は消滅し、プレイヤーの目的は奪われる。

目的が無くなったゲームほど退屈なものは無い。
終盤にかけて明らかに退屈になったのはそのせいだろう。

本作ディレクターであるトライクレッシェンドの初芝弘也氏は

中学生くらいまでは全く意味がわからないかもしれません(笑)。でも、聞いたときは難しくても、大人になれば分かる……というのはあると思うんです。小さくても雰囲気は分かると思いますし。わたしも子供のころ、何も分かってはいませんでしたが「ガンダムの世界はかっこいいな」と思ったり(笑)。
ITmedia

と語る。

ガンダムがかっこいいのは、ガンダムがガンダムの世界で完結しているからだ。
シャアは決して視聴者に呼びかけない。
どのキャラも徹底してガンダムの世界で生きている。
だから視聴者はガンダムの世界を信じる。

そして、そのガンダムの世界でのセリフが、
実は我々の世界でも使えることを発見して「かっこいい」と思うのだ。

トラスティベルのキャラはプレイヤーに話しかけることで
結局、自分達の行為はお芝居だったということをプレイヤーに暴露する。

ディズニーランドから帰ろうとしたら
キャラが着ぐるみ脱いで手を振ってるようなものだ。

にわかにトラスティベルの世界が信じられなくなる。
キャラのセリフは、全てが嘘っぽく思える。

■道具的にキャストされるキャラ

キャラを増やすと、それぞれの人生背景から手軽にストーリーを取り出すことができる反面、
必然性がなくなり、「とってつけた」感が強くなる。
各キャラに合った話をしないといけないので、話題も散漫になる。

それでいてキャラを印象付けるために
いきなり重そうな発言するから、プレイヤーはついていけない。

そのキャラに十分付き合って、苦楽を共にした後で初めて響くようなセリフが
ぽんぽん出てくるので、興ざめしてしまうのだ。

表層の事象で説明しようとするから、沢山のキャラが必要になってしまう。
本質を突き詰めれば、そんなに沢山のキャラは必要ない。

光のアレグレット、闇のポルカ、
その光と闇に照らされて深みを与えられるショパン、
それで十分だったのではないか。

スパイスとしてパーティに加えるなら、
ビート、サルサ、ビオラくらいか・・
その他は登場はさせてもパーティには不要だと思った。

■漠然としたテーマ

いろいろメッセージを発している割に何が言いたかったのか分からない。
人生の意義?勇気?正義?

このままでいいのか、行動しろ、みたいなことだった気がするが、
ポルカが自ら命を犠牲にするというのはいかがなものか。
一歩後ろに下がる勇気ってちょっと違うだろ、みたいな・・

最悪なのは、それでショパンが生き返ったり、
最終的にポルカも戻ってきたりすること。

今、青少年に最も悪影響与えてるのってそういうところなのでは?

いや、ショパンは現実で死んで夢で生き返ったんだよとか、
ポルカは落ちてるだけだったでしょ、
などというのはファンタジーを借りたごまかしでしかない。

ショパンとポルカは死んだ。
しかし、不思議な力で生き返った。
それがエンディング中の数分間で起こる。

さらに隠しダンジョンでも死んだはずのキャラが現れ、
みんなで頑張れば生き返る、みたいな展開になる。

命はこんなに軽く扱うものではない。
あれだけ社会的なメッセージを発信し続けた後で
何故こんな重大なことが見逃されるのか不思議でならない。

■結論

伝えたいメッセージはあるのだろうが、
「物語」にまで昇華されていなかった、というのが一番の印象。

内容以前の問題だなぁ・・

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