トラスティベルシナリオの検証と考察 - しろログ

トラスティベルシナリオの検証と考察

2007/07/15

※ネタバレあり。

先日クリアしたトラスティベルの何が良くなかったか考えてみる。

最初に言っておくと、映像と音楽、それを支える技術力は最高だ。
ブーニン氏のショパンを5.1ch非圧縮で録音している点も見逃せない。

というわけで唯一にして最大の難点、シナリオについて考える。

■現実世界(現代日本)へのメッセージを語るキャラ

キャラのセリフがあからさまにプレイヤーの世界へ言及している。
プレイヤーにはゲームの世界へ入り込んでもらわないといけないハズなのに
逆に現実へ突き戻している。

ゲーム中だけでは物足りなかったらしく、
エンディングではキャラが総出でプレイヤーを問い詰める。
小一時間問い詰められる。

オープニングであれだけ引きずり込んでおいて
エンディングで突き返すとは恐れ入る。

ファンタジーの魅力は、本質をそのままに、
表層(現象)だけを変えていることにあると思う。

本質的に現実世界とリンクしていれば、
後はその世界観を徹底して完結させれば良い。

そのリンクを発見するのはプレイヤーの役割であり目的だ。

プレイヤーは、その世界での本質を現実世界にも発見し、
あるいは現実世界の本質をゲームの世界に発見して感動する。

その中のキャラが、自分の世界を突き破って、
こちらの世界に言及してくる時点で、相当プレイヤーを愚弄している。
ファンタジーの意義は消滅し、プレイヤーの目的は奪われる。

目的が無くなったゲームほど退屈なものは無い。
終盤にかけて明らかに退屈になったのはそのせいだろう。

本作ディレクターであるトライクレッシェンドの初芝弘也氏は

中学生くらいまでは全く意味がわからないかもしれません(笑)。でも、聞いたときは難しくても、大人になれば分かる……というのはあると思うんです。小さくても雰囲気は分かると思いますし。わたしも子供のころ、何も分かってはいませんでしたが「ガンダムの世界はかっこいいな」と思ったり(笑)。
ITmedia

と語る。

ガンダムがかっこいいのは、ガンダムがガンダムの世界で完結しているからだ。
シャアは決して視聴者に呼びかけない。
どのキャラも徹底してガンダムの世界で生きている。
だから視聴者はガンダムの世界を信じる。

そして、そのガンダムの世界でのセリフが、
実は我々の世界でも使えることを発見して「かっこいい」と思うのだ。

トラスティベルのキャラはプレイヤーに話しかけることで
結局、自分達の行為はお芝居だったということをプレイヤーに暴露する。

ディズニーランドから帰ろうとしたら
キャラが着ぐるみ脱いで手を振ってるようなものだ。

にわかにトラスティベルの世界が信じられなくなる。
キャラのセリフは、全てが嘘っぽく思える。

■道具的にキャストされるキャラ

キャラを増やすと、それぞれの人生背景から手軽にストーリーを取り出すことができる反面、
必然性がなくなり、「とってつけた」感が強くなる。
各キャラに合った話をしないといけないので、話題も散漫になる。

それでいてキャラを印象付けるために
いきなり重そうな発言するから、プレイヤーはついていけない。

そのキャラに十分付き合って、苦楽を共にした後で初めて響くようなセリフが
ぽんぽん出てくるので、興ざめしてしまうのだ。

表層の事象で説明しようとするから、沢山のキャラが必要になってしまう。
本質を突き詰めれば、そんなに沢山のキャラは必要ない。

光のアレグレット、闇のポルカ、
その光と闇に照らされて深みを与えられるショパン、
それで十分だったのではないか。

スパイスとしてパーティに加えるなら、
ビート、サルサ、ビオラくらいか・・
その他は登場はさせてもパーティには不要だと思った。

■漠然としたテーマ

いろいろメッセージを発している割に何が言いたかったのか分からない。
人生の意義?勇気?正義?

このままでいいのか、行動しろ、みたいなことだった気がするが、
ポルカが自ら命を犠牲にするというのはいかがなものか。
一歩後ろに下がる勇気ってちょっと違うだろ、みたいな・・

最悪なのは、それでショパンが生き返ったり、
最終的にポルカも戻ってきたりすること。

今、青少年に最も悪影響与えてるのってそういうところなのでは?

いや、ショパンは現実で死んで夢で生き返ったんだよとか、
ポルカは落ちてるだけだったでしょ、
などというのはファンタジーを借りたごまかしでしかない。

ショパンとポルカは死んだ。
しかし、不思議な力で生き返った。
それがエンディング中の数分間で起こる。

さらに隠しダンジョンでも死んだはずのキャラが現れ、
みんなで頑張れば生き返る、みたいな展開になる。

命はこんなに軽く扱うものではない。
あれだけ社会的なメッセージを発信し続けた後で
何故こんな重大なことが見逃されるのか不思議でならない。

■結論

伝えたいメッセージはあるのだろうが、
「物語」にまで昇華されていなかった、というのが一番の印象。

内容以前の問題だなぁ・・

関連記事:
Trusty Bell トラスティベル ~ショパンの夢~

カテゴリ:ゲーム

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コメント・ご質問

2007/07/29 01:47 ゲストさん

まぁ、単なる部品が権力握って調子ぶっこいて
自分の作品で説教垂れちゃうのも、たまにある事。
これでみんなの評価を見て、現実に戻るよ。
そうしたら、今までの自慰行為じみた作品作りから
一皮向けて、いい作品作ってくれると思う。

2010/08/17 16:17 yuduさん

はじめまして。

おそらく、欲張りすぎなんですよね。
現実世界への説教がしたいならそれはそれだけにすれば、まだ「説教をしたいがためにここまできた話」としたブーイングは受けるだろうけれどオリジナリティのある特異な話しとして終わるのだけれど、

設定のベースとラストのポルカとショパンが復活する形は『ショパンの心理描写』であり「ループ世界」としての面白さを描いたこれまた特殊な話のため、どちらにも入り込めない。

「しかも現実の説教、行動」と「ループファンタジー、心理世界」
ってあまりにも相反しているから溶け込めず、
しかも溶け込む工夫もしておらず。
だから説教をされれば、現実世界の教訓が浮かび、
『キャラがそんな簡単に生き返っていいのか!』という違う解釈にしか受けとれなくなってしまう。
本来の解釈は、妹のエミリアへのショパンの愛情、死への無念さからエミリア(ポルカ)が死ぬ運命から脱する世界をショパンが作り上げ、また生を大切にすることでそのループの打ち止めをしていく、、、ということなのですけど。
まぁそのために必要な伏線が以上に少なく、
その割に説明などしなくてもいいところで極端な説明が入る。
シナリオが悪いというよりは、ライターが悪いとしか。

昔ながらのRPGに近い感覚と技術力、映像力をもっており
さらに深い設定を練る事にも長けている。
かなり楽しんでいる作品なので
ほんとうに勿体無い限りです。
次回作に期待します。




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