虞美人草を読んだ。

青空文庫に全編収録されている。

文章は饒舌だけど、いやらしくない。
それでいて、この長編を破綻させずに描ききっている。
一度ハマると夢心地にさせてくれる。

一文あらすじ・・
かつて京都に住む恩師の娘と将来を(ほぼ)約束していた小野さんが、
東京で勉強しているうちに女王様風の藤尾といい仲になるが、
ものの道理を第一義とする友に諭され、元の鞘に収まり、
藤尾は怒り心頭の末、死んでしまう。

話の展開は分かりやすいし、キャラも立っているが、微妙な点もある。

・漱石先生は藤尾に早く死んで欲しいとすら思っていたらしいが、
 藤尾がそれほど憎らしげには描かれていない。

・藤尾を嫁にしようとしていた宗近さんが、藤尾と小野さんを引き離す。
 もちろん単なる恋路の邪魔ではないと言ってるし、実際そうだと思うが、ちょっとひっかかる。

・小野さん、最後の心変わりが早くて不自然。

特に後半~ラストにかけて、「えっ、そうなるの」みたいな展開だった。

それでも、やはり見所満載の小説であることに間違いない。

その中の一つ。
博覧会で観客が押し合いへし合いの一幕。

小夜子は夢のように心細くなる。
孤堂先生は過去の人間を圧し潰すために皆が揉むのではないかと恐ろしがる。
小野さんだけは比較的得意である。
多勢の間に立って、多数より優れたりとの自覚あるものは、身動きが出来ぬ時ですら得意である。

小夜子と先生は京都から東京へ出てきたばかり。
一方小野さんはもうすぐ博士になろうかという東京人。

わずか3人の人物の表現で
世の中という、大きくてつかみどころの無いものを感じ取ることができる。

この博覧会のシーンは、世の中に対する鋭い視点が光る。

博覧会は当世である。
イルミネーションはもっとも当世である。
驚ろかんとしてここにあつまる者は皆当世的の男と女である。
ただあっと云って、当世的に生存の自覚を強くするためである。
御互に御互の顔を見て、御互の世は当世だと黙契して、
自己の勢力を多数と認識したる後(のち)家に帰って安眠するためである。

ふと思い浮かんだのはインテレサントという言葉。

当世的な人々を驚かそうとする行為がつまり
インテレサントということなのだろうか。

オススメ度★★★

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