神林長平 - 帝王の殻

帝王の殻を読んだ。
あなたの魂に安らぎあれに続く、二作目。
時間的には「あな魂」の260年前の出来事らしい。
本作のキーワードはなんと言ってもPAB(パブ)。
PAB(Personal Artificial Brain = パーソナル人工脳)は機械で、
人は生まれたときから、このPABを会話でもって育てます。
PABは、いわば内なる自分の具現化です。
PABが無かった時代には、心の中でしていた自己との対話を、
人と話すように行えるわけです。
このアイデアだけでお腹いっぱい。
(一応、テーマとしては「父と子」があるのですが、そういう意味では
なんとなくテーマが2つあったような・・)
主人公恒巧(のぶよし)とそのPABの絶妙なバランスが最高。
PAB:死ぬ前に言ってやりたかったな。『父さん、おれはあんたが憎い』と。だが言えなかった。こわかったからな
恒巧:愛していたんだ
PAB:まさか - 愛していたから、憎いと言えなかったというのか
恒巧:憎しみも愛のうちなんだ
PAB:……そうかもしれないな
恒巧:おまえにそれがわかるのか
PAB:わかるさ
恒巧:おまえはおれだからか?
PAB:おまえといちばん親しい、喋り相手だからだ。
この微妙な感覚の差異は、恒巧とそのPABの間に一定の空白時間、
つまり(恒巧が旅に出ていて)会わなかった時間があったからこそ、
生まれたのだと思いますが、
あなたはわたしだ、というPABもいる中で、
このセリフを言わせる恒巧は(割と)幸せ者でしょう。
こういった、登場人物とそれぞれのPABとの「関係」が、
上手く書き分けられている所にも注目です。
オススメ度★★★
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